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「やめろって言ってやめれるわけじゃないだろうから、せめて増やさないで済むように好きな事やれってさ」
「じゃあ……それって……」
「そ。ついに堂々と東京行ける」
涼介が僕に向かってニカっと白い歯を見せて笑う。そして涼介の唇についていたリップピアスが外されていることに僕は遅れて気づく。
「……良かったね。僕、誰よりも応援してる」
「おう。ライブする時は呼ぶな」
「うんっ」
涼介の笑顔が太陽に照らされていつもよりずっと輝いて眩しい。僕は今日の日のことも、今日の涼介の笑顔もきっと一生忘れることはないだろう。
「涼介、僕……ずっと苦しかった。自分だけど自分じゃなくて、隠しておきたいのに認められたくて。ずっと自分がチグハグで苦しかった」
「…………」
僕と涼介の間をサァーと風がすり抜けて言葉を吐きだした傍から言葉を攫って巻き上げていく。僕は涼介の切れ長の目を真っすぐに見つめた。
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