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「でも変われたんだ。涼介のお陰だよ。僕と出会ってくれてありがとう。僕の『特別』でいてくれてありがとう」
「……どういたしまして」
涼介は照れたのか頬を人差し指で掻いてから両手を雑に投げ出した。僕も涼介を真似て両手をコンクリに投げ出す。
そして僕は絵にかいたような海色の空を眺めたまま、肺一杯に空気を吸い込んだ。そして勢いよく、ふぅっと息を吐きだした。
もう苦しくない。
もう偽らなくていい。
もう自分を生きていいんだ。
どこかで人生は山登りだなんていうフレーズを聞いたことがある。僕らの人生の道のりってやつはまだまだ長い。また苦しい何かに出会うこともだろう。どこへも行けず立ち止まることもあるだろう。何もできずにただ涙を流す夜だってあるだろう。
でも僕らはきっと迷ったり遠回りしながらも、自分らしく自分のぺースで呼吸をして僕らの想い描く未来に真っ直ぐに歩いていける。
そう、これは予感じゃなくて確信だ。
「──僕、今日が生まれてきて一番呼吸しやすい」
涼介からの返事はない。
ただ僕らの呼吸音が澄み切った夏の空に瞬く間に吸い込まれていった。
2024.5.29 遊野煌
※フリー素材です。
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