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ミーンミーンミン……ジー……
うざったい暑さにセミの声が重なって、肌に纏わりつく汗により一層不快感を感じながら、僕こと新藤真央は自転車のペダルを漕ぐスピードを上げた。
今日はある目的のために僕は深くキャップを被りこのクソ暑い中、感染症予防でもないのにマスクをつけている。そして先ほど三十分かけて到着した隣町の本屋を僅か五分であとにした僕は自宅に向かって真っ直ぐ自転車を漕いでいた。
(買えてよかったな)
大通りにでた僕は隣を走る車が減速したのをみてゆっくりとブレーキを掛ける。車両用の信号は赤だ。僕はカゴの中の青いエコバックの眺めながら信号待ちをする。
──「初音、そのワンピどこの? かわいい~」
──「ありがと~、マオマオちゃんがSNSにアップしてたメイク画像からピーチフィズカラー気になってて」
そんな可愛らしい声が聞こえてきて、僕が何気に目を向ければ横断歩道を渡っていたのは同じクラスの市川初音と水野小春だった。
(やば……っ)
僕は咄嗟に俯くとアスファルトに自分の汗がポタンと落ちるのを見ながら一瞬呼吸を止めていた。
何も悪いこともしていない。
二人と仲が悪いわけでもないし苦手な訳もない。
どちらといえば争いごとを嫌う僕は誰とでも仲良くできるし、中性的な見た目からクラスの男女からも割とよく話しかけられるほうだ。
おそらく僕が咄嗟にこんな反応を取ってしまうのは、カゴの中の青いエコバックに中身のせいだろう。
──誰にも知られてはいけないたった一つの秘密
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