死んだ人間の歌声

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死んだ人間の歌声

すでに亡くなっている大物歌手の歌声をAIで再現して、新曲を歌わせて儲けようと考えた芸能プロの社長がいた。その社長は、その大物歌手の実子で、その芸能プロも、もともとはその大物歌手を支える個人事務所だったが、他の芸能人も所属して大きくなり、その大物歌手が亡くなる前に息子がその芸能プロを引き継いだのだ。だが、親は大物歌手だったが、その息子は特に才能のない凡人で、親である大物歌手が亡くなると事務所は、急激に収益が落ちてしまった。そこで、その息子社長が考えたのが、死んだ親の声を蘇らせて、新曲を発表するというものだった。 だが、その新曲は発売されなかった。AIに歌わせようとすると、歌を歌うどころか、死んだ親の声で、その息子社長に、死んだ人間に頼るな、自分で何とかしろと、AIは歌うどころかその息子社長に死んだ親の声で説教をした。 プログラムや機材を何度も調べたりしたが、そのAIが息子社長の思い通りに歌うことはなかった。 息子社長は、そういえば、いつもこんな風に俺を叱っていたなと、自分の子供に厳しかった親を思い出していた。AIが声だけでなく、性格まで真似たのかは分からないが、その新曲プロジェクトは中止になった。
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