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鳥籠の中のライラック
古びた羊皮紙に書かれたその求人は、その時勢にしては珍しいものでした。
私が十四、五の頃のことでございます。
「求ム 住み込み メイド 兼 ピアニスト 給金応相談」
住み込みの女中。そこまではよくあるものです。ピアニスト。
当時女性の初等教育は認可されたばかりで、ピアノを習っている女子は貴族の子女か音楽家の娘くらいしかおりませんでした。私の家系は代々ピアニストでございましたが、父が拵えた借金で首が回らなくなりお家は解体、私もまだ幼いながらも働きに出る必要がございました。
そう言った訳で、奇しくも私はその条件に当てはまり、そのお屋敷で働くことになったのでございます。
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