~Prologue~

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太い柱をすり抜けたその先に、彼はいた 瞬間、シエルは表情を緩める 「レイ、お待たせ」 天窓から真っ直ぐに差し込んだ光が レイと呼ばれた男の横顔を照らしている 光のプリズムの中で空中に舞った塵が キラキラと反射する様が美しい 「遅い」 壁にもたれたまま 抱え込んだ画集から目を離さず レイは応える 口調はきついが 口元に笑みが溢れているのを シエルは見逃さなかった 次の仕事のために明るく染めたばかりの髪が 無造作に乱れて艶めかしい 前髪が少し伸びたのか 鬱陶しそうに掻き上げる仕草も オフの時だけの特別仕様だ こんな風にラフな髪型が一番似合うのに 仕事ではやりたがらない 『こんなレイを知っているのはオレだけ』 シエルはレイの横顔を見つめながら そんなことを考える 「ごめんね。買い物してたから」 「買い物?」 レイはようやく画集を閉じ 逆光の中に立つシエルを見上げた 「うん。リュクサンブール公園でランチにしない?」 シエルは少し緊張した いやだと言われたくない
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