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そしてあの事故は私と蔵之介を引き裂いた。
高等学校3年生の夏休みといえば図書館に夏期講習と将来に向けての頑張りどころだ。私は図書館と塾に通い自宅でも出来る限り勉強机に向かった。
「ねぇ、莉子遊びに行こうよ」
「図書館なら良いわよ」
「ちぇっ」
図書館までの道がいつものデートコースだった。私は参考書をトートバッグに詰めて肩に掛け、蔵之介は自転車をひいて歩いた。
図書館の机で私が参考書にマーカーを引いていると蔵之介はあみだくじを作っては合格、不合格と書いて私を怒らせた。
合格ならば東京の大学に進学する
不合格ならば地元の大学に進学する
蔵之介は私が不合格になりますようにと願掛けをしていた。
「私の幸せと不幸せどっちが大切なの!」
「僕は莉子と2人で幸せになりたい」
高等学校1年生といえば中学生の延長線のようなもので蔵之介は無邪気で一途だった。
「え、なに」
深夜0時、窓で音がした。恐る恐るカーテンを開けると路地に自転車に跨った蔵之介が満面の笑みで手を振っていた。そして下を見ろと指を差した。
「ーーー暇なのね」
ベランダには大量の紙飛行機が落ちていた。中を開けて見ろといった仕草をするので一機、また一機と紙飛行機を破かない様に広げて見た。
莉子 大好き
莉子 頑張れ
莉子 合格
涙が出た。
顔を挙げると蔵之介の背中は手を振りながら6km離れた自宅への暗い道のりを走って行った。
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