Reave for a Life短編 Yukemuri winter

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おばさん、いったい何したんだろう。 まぁ給湯器の故障だと思うし、使えないのは今日だけだろう。 それに昔からお風呂に入れないのは慣れてる。 だから私だけならたかだか一日入れない程度、気にする事でもない。 「宮古お姉ちゃん、そのメモなに?」 すぐそばに寄ってくるノエルに考えを寄せる。 しかしノエルは別だ、あの子はきっと嫌がるだろう。 それに私としても場所があるのならちゃんと綺麗にしてあげたい。 私とお姉ちゃんみたいな暮らしは体験させるものじゃない。 「千種おばさんから、お風呂壊れちゃったんだって」 「えーー!じゃあ今日はどうするの?」 「商店街にお風呂屋さんあるし、そっち行くよ」 「お風呂屋さん?」 ノエルはそう返して首をかしげる。 そうだノエルが居た環境も大分普通じゃなかった。 となれば銭湯を知らないのもそうなるか。 「お風呂が沢山ある場所の事、ノエルも行くよ」 「お風呂がいっぱいあるの?行く行く!」 「それじゃ着替えとシャンプーとボディソープ、袋に詰めてきな」 「はーい」 楽しげに返しながらノエルは脱衣所まで走っていく。 その光景を眺めるとなんだかほっこりとしてくる。 ノエルが望んだ生活が出来て、毎日すくすくと育っている。 その様子を見るだけなのに、なんだか嬉しくて仕方がない。 千種おばさんもそう思ってくれるのだろうか。 (さて、お肉だけは配達してもらおう) スマホを弄ってネットスーパーから豚バラ肉を注文しておく。 届くのは時間を考えて19時ほど。 そのくらいならすぐにご飯に出来るだろう。
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