Reave for a Life短編 Yukemuri winter

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内部に入ればそこはまだまだ真新しさを感じさせるフロアと昔ながらの瓶に入った牛乳がぎっしり入った冷蔵庫、そしてマッサージチェアや吊り下げられたテレビなど、テレビで見る昔ながらの銭湯と真新しさが上手く合わせられていた銭湯だった。 「わぁー!すごい、きれい、大きい!」 ノエルはノエルで始めてみただろうそこに目を輝かせていた。 まだお風呂に入る前だってのに、ここで騒いだら疲れちゃうでしょ。 「ノエル、靴は下駄箱にね。私はお金払ってくるから」 「はーい、えっとどの番号がいいかな」 念のためつかず離れずの距離を保ちながら値段だけ確認しておく。 一人当たり600円ほど、割と良心的な値段だ。 「あ、すいません。俺ら4人で精算できますか?あとこれを使いたいんですけど」 私が話す前に伊吹が割ってくる、そして財布から取り出したのは何らかの券。 それを番頭台のおばちゃんが確認するとレジを打ち始めた。 「伊吹、あれ何なの?」 「爺さんが仕事で貰ったらしいここのクーポン券だ、要らねぇってんで押し付けられた」 「じゃあここに来たのってそれ使うため?」 「まぁな、そこにシノとレンとノエルに会ったって事よ」 なるほど、伊吹の住んでるお寺にも良い風呂はあったのに来たのはそういう事か。 腐らすのももったいないし使った方が楽しめることもあるだろう、ああ見えて作家なんだし、経験を面白く小説に生かしてほしい所だ。 「はい、それじゃ4人分ね。お待ちどうさま」 清算も終わったようだ、それならそろそろ行くとしようか。 「ノエル―、おいで―」 「はーい」 手に下駄箱の木札を持ったまま、嬉しそうにノエルが寄ってくる。 さてこれからが楽しい所だ、私もゆっくりするとしよう。
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