Reave for a Life短編 Yukemuri winter

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「そんじゃ、また明日なー」 「東雲、ノエルちゃん。また今度ね」 「蓮お兄ちゃんも伊吹お兄ちゃんもまた今度―」 「それじゃ、また明日ね二人とも」 それぞれ口にして私達も帰路に付く。 温まったせいか気温は低くなっているだろうに外の寒さはあまり感じない。 とはいえここで走ったりすると汗をかくだろうから歩いて帰る。 さっぱりするために来たのに汗かいたら元も子もない。 「宮古お姉ちゃん、ねむいー」 「帰るまで我慢ね、そんなにかからないから」 「おぶって」 「だめ、自分の足で歩くの」 ノエルも口を尖らせながらも歩くスペースを落とさないでいた。 まぁ本当にまずくなったら背負って帰ろう。 でもそれまではちゃんと自分でできるようにやらせよう。 (……こうしてみたらなんだか家族みたいだな) 不思議とそう思う。 千種おばさんとノエル、そして今も心にいるお姉ちゃん。 それが私にとっての家族で、ノエルもまたその一員だ。 1か月前からそうだというのに、なんだか急に実感が湧いてくる。 (……大丈夫、おばさんもいるしあんな風にはならないよ) 昔と違ってもうそばに頼れる人もいる。 それにノエルが私を信頼してくれるんだから、私もそれに応えてあげたい。 いざとなれば蓮や伊吹も頼れる。 あの二人なら私に何かあってもノエルの事を守ってくれるだろう。 その二つがあるだけで、なんだかとっても心強く感じられる。 あの日からこんな風に続くなんて思わなかった。 (ありがとう、蓮、伊吹。本当に感謝してるんだよ) 声に出ない思いは寒空の星のよう。 微かな瞬きでもたしかにそこにある。 それが伝わればいいなと思いながら私はそれを思うのだった。
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