Reave for a Life短編 Yukemuri winter

9/9

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
やがて家に付き、眠たそうなノエルを部屋に寝かせ、家に付いていた豚バラ肉を冷蔵庫に仕舞うともう一度ドアが開いた。 「はぁー、ただいまー」 「おかえりなさい、千種おばさん」 「宮古ちゃん、出迎えありがと。そう言えばメモ見た?」 「見ました、ノエルと一緒にお風呂屋さん行ってきました」 「へぇー、もしかして最近できたあそこ?」 「はい、とってもいい場所でしたよ」 「いいなー、後でその話聞かせてね。あとこれ貰ってきちゃった」 おばさんは手に持ったケーキの容器を見せつける。 中身はきっとノエルが喜ぶようなフルーツたっぷりのショートケーキだろう。 でも当人が寝ているからこれは次の日のために取っておこう。 「そう言えば今日のご飯なにー?」 「お鍋ですよ、最近寒くなってきましたし」 「おーいいねー、キムチ鍋とかどう?」 「ノエルも食べるんで別に装っておきますよ」 「はーい、それじゃ私も手伝うよ」 そうしてご飯を炊き、具材を切って、味噌を解いて煮ていけば簡単にできる。 今日は白菜と豚バラ、人参と豆腐の味噌鍋だ。 味変用にキムチは別皿に、これでおばさんも満足だろう。 ノエルの分を装っておいて、ラップをかけておけば後で食べられる。 私も炊けたごはんを二人分の茶碗に装って、鍋敷きの上に鍋を置く。 そこで念のため白菜と人参に箸を通す。 柔らかくなってれば歯が弱ってきてるおばさんも食べられるだろう。 「……宮古ちゃん、なんだかいい顔してる」 「そうですか?それならいいんですけど」 「そうよ、私が保証するわ」 その言葉に口元を綻ばせる。 それはきっとみんなのおかげだ。 だからいつかそれに何かを返せたらいいな。 そう思いながら私たちは手を合わせて言うのだった。 「「それじゃ、いただきます」」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加