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その日から、王に不思議な力がそなわった。
少し先の将来、自分にふりかかる災いが、見えるようになったのである。
たとえば、いくさ場で、敵の兵士がものかげから襲ってくるのが、あらかじめ見えた。またあるいは、敵がひそかに射た矢が、自分に当たろうとするのが、あらかじめ見えた。
迫ってくる危険が前もって見えるのだから、それを回避するのは、たやすかった。
「なんと便利な力よ」
と、王はほくそ笑んだ。「悪魔の力どころか、神の力ではないか」
かつて無慈悲に処刑した魔女のことを思い出す。
母娘ともどもに殺されながら、あの女が、なぜ恨みしかない自分に、このような重宝する力を与えたのか?
考えても、わからなかった。
結局、殺される恐怖で、頭が錯乱し、わけがわからなくなったのかもしれない、と解釈することにした。
ともかく、王は、身の危険をおかすことなく、敵を倒していけるようになった。
王はいくさ好きだった。
次々にとなりの国に攻め入り、自分の領地として併合していった。
最初はほんの小国にすぎなかった彼の国は、じきに、そのあたりでは名の知られた中規模の王国となった。
それでも王は満足しなかった。
さらに隣接する国を恫喝し、攻め入り、領土を広げることに余念がなかったのである。
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