センベツノウタ

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「でも、そんなことが可能だと思うか? 一週間で一万人がいなくなってるんだぞ」 「金を積めばそういう仕事を引き受ける裏組織とか、結構あるんじゃないですかね」 「馬鹿なことを。アニメの見過ぎだ。お前も営業なら現実を見ろ」 「いやいや、課長こそ現実を見ましょうよ。実際に人がいなくなってる理由を説明出来ます?」  失踪した人たちは、なんの前触れも無く、忽然といなくなったという。沢木さんも前日は普通に出勤し、いつものように小言をばら撒いていた。わたしも挨拶の声が小さいと注意を受けたが、良くも悪くも普段通りだったはずだ。  それから、にわかに世間が騒がしくなった。  時が経つにつれ、この失踪事件がもっと前から始まっていたことが明らかになったのだ。  わたしが最初に感じた小さな違和感は、朝の情報番組だった。いつも見ていたおなじみのキャスターの顔を見なくなった。それは沢木さんがいなくなる七日前のことだ。おそらく失踪事件に巻き込まれたのだろう。  ネットニュースのトップに挙がる内容も異変が起きていた。毎日のように見ていた事件や事故のニュースがパッタリと止まった。さらには野球やサッカーなどのスポーツが軒並み休止に追い込まれた。
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