センベツノウタ

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 その日、わたしは朝から気分が優れなかった。  熱などはないが、頭が重く、耳鳴りがする。元々わたしは低血圧のため、朝はすぐにスイッチが入らない。コーヒーを淹れ、トーストをかじりながらテレビをぼうっと見ているうちに、やっと頭が冴えてくる。  わたしが勤めている会社のオフィスは、八人程度のデスクしかない小さめの一室だ。うちの課は仕事柄全国に出向することが多いため、本社ビルから離れた場所に拠点を構えているのだ。  現在このオフィスにいるのは、わたしを含めてたった四人。そのため一人でも欠けると違和感がある。  出社してしばらくして、斜め前の席が空いていることに気付いた。同じように気にしていたらしい右隣の課長と視線が合う。
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