センベツノウタ

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 事態の深刻さに気づいたのは翌朝のことだ。朝食を食べながらテレビのニュースを見ていると、〝同時失踪事件〟の文字が目に飛び込んできた。全国で人がいなくなる事件が多発しているというのだ。  日本では年間に数万人もの人が行方不明となるという。日単位にしてもそれなりの数にはなる。大々的に報じられているということは、それ以上の人間が失踪したということだ。 「ヤバいことになってるな」  わたしは課長たちとオフィスのテレビで失踪事件を報じるニュースを見ていた。斜め前の沢木さんの席は、今日も誰も座っていない。 「本社でも似たような失踪があったらしいよ」  わたしの左隣で島田さんが付け加えた。 「営業二課の間中さんと、三課の和久井部長」 「そうなんですか?」  島田さんが挙げた名前は、どちらも曲のある人物だった。間中さんは、サボりが酷いことで有名な人だ。業務中にパチンコ屋にいるところを発見されるのは日常茶飯事。そのせいで二十年も働いているにも関わらず未だに平社員のままだ。  一方の和久井部長は、何度も女性社員にセクハラして問題になっていた。わたしも気軽にお尻を触られて、殴りたくなる衝動をぐっと堪えたことがある。
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