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病院を出たマヒワは、西門のほうに向かっていた。
マヒワの心情を反映してか、テンの足どりにも、いつもの元気がなかった。
――ああ、自分が嫌い!
――せっかくお見舞いに行ったのに、自分のわがままを伝えただけじゃない!
――あー、マヒワのばか! ばか! ばか!
両親が殺されたことに対して気持ちの整理を付けたはずなのに、実際に烏衣衆や白沙通商連合の事柄に直面すると、感情が波打って、冷静に行動できずにいる。
――廻国修行して本当に成長できてるのかな……。
――あたし、いま、なにやってんだろう……。
――自分のわがままに、いろんなひとを巻き込んで、迷惑掛けてるだけじゃないのかな……。
テンの鞍上でマヒワは負の感情の悪循環に陥っていた。
いつの間にか勝手に歩みを止めたテンは、足下の草を食み始めた。
通りを行く人々が、その脇を不思議そうに眺めて、過ぎて行った。
「あーッ! いた、いた! マヒワさーんッ!」
自分の名を呼ぶ声に、我に返ったマヒワは、あわてて周囲を見渡した。
「あれっ? 門衛さん。どうしました?」
帰りに門衛の詰め所に寄ると約束していたから、その方向に行こうとしていたが、向こうから探しに来るとは思ってもいなかった。
「手伝ってください! というか、助けてください!」
「ええ、お手伝いなら、よろこんで。でも、助けるって、なにを?」
「とりあえず、急いでるんで、道々、ご説明します!」
さあ、こちらへ――。
と、門衛が先導のつもりか、さっさと行ってしまうので、マヒワはあわててテンを駈けさせる。
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