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「そうですね、地面を掘っていて底は相当深いですよ。一度清掃で水を抜いたところを見ましたが、水槽の壁面から突き出た階段がらせん状に底までつながってましてね。水槽の高さ分だけ深さがありますね」
門衛の説明に、マヒワは一つひとつ頷いた。
周囲の状況を一通り把握すると、マヒワは門衛の案内で城壁に上っていった。
居住塔の周りには武器を手にした治安部隊の隊員と門衛が、居住塔を遠巻きにしていた。
その間には、三人の隊員と二人の門衛が床に倒れていた。
痛みを堪えて呻いている者もあれば、血だまりのなかで、ぴくりとも動かない者もいた。
「なんで、けが人をそのままにしているのよ!」
思わず口にでる。
「介抱しようとして近づいたら、あいつが飛び出してきて、斬りつけてくるんですよ」
遠巻きの隊員や門衛たちは、どの顔もマヒワの知っている顔であった。
ということは、いま床に倒れている者もそうなのだろう。
マヒワは、心の底から怒りがこみ上げてくるのを感じた。
――怒り。怒り。怒りはダメ。
さぁ、呼吸に集中して……。
マヒワは、怒りを認めては、解放することを繰り返した。
怒りの感情を認めては、深く息をして、調えていく。
そうやって怒りの感情と闘っているマヒワの目の前で、先ほど案内してくれた門衛が遠巻きにしている同僚と、何やら話をして、ざわついていた。
門衛たちがざわついている方向を見ると、居住塔の扉の前方に、棒を傍らに突き立てた長身の男がいた。
「なんだ――オハムさん戻ってきたのか」
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