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「やっと巡り会えたですって、あなたが勝手に徘徊してただけじゃない! 知るもんですか!」
会話だけ聞いていれば、べたな演劇のひと幕のようなやりとりだったが、面白がっている場合ではないので、門衛たちはオハムの暴挙を止めに入った。
「オハムさん、だめです!」
「マヒワさんに、何という無礼なことを!」
「いくら兄弟子でも、許せません!」
門衛たちはマヒワを背にして、オハムの間に立ちはだかった。
「おいおい、邪魔だ! お前らに俺が止められるわけないだろう!」
それでも、からだを張ってマヒワを守ろうとする門衛たち。
「なんなら、久しぶりに稽古をつけてやろうか」
オハムが残忍な笑みを浮かべ、舌なめずりする。
マヒワは自分のせいで、同門同士で大変なことになりそうな雲行きに、はらはらしていた。
――下手に門衛さんたちを庇うと、あとでいじめられそうだし、困ったな……。
と思う一方で、あのややこしい師範代がこの場にいないことに感謝した。
「ははぁ、さてはお前たち、このお嬢さんに惚れてるな。それで、男振りのよいところをみせようと。うん、うん、かっこいいねぇー」
「愚弄するにもほどがありますよ!」
「いい加減にしてください!」
門衛たちも、惚れている点は当たっているだけに、半ばごまかし、半ば本気で、腹を立てだした。
これも、兄弟喧嘩っていうのかしら……。
――というか、しょうもないことに、がっつり巻き込まれてるんじゃなかろうか、あたし?
マヒワの目の前では、オハムと門衛たちとの言葉の応酬もなくなって、ただ睨み合うだけになっていた。
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