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「このオハム、マヒワ殿の弟子にして頂きたく、参上いたしました。なにとぞ、なにとぞーッ」  と大げさな口上を捲し立て、扉の前を占拠しているのは、オハムであった。  弟子にするまでは動かんぞ、という態度がありありである。 「はぁぁぁ……」  マヒワから、つい先ほどまでたんまりあった元気が抜けていった。 「あのね、あなた、オハムさんでしたっけ? 残念ですけど、あたしはいま、弟子を――」  とまで言って、そのあとを継いだのは、ライラだった。 「弟子になるなら、わたしのおとうと弟子ね。わかった?」  とライラは昂然と宣言する。 「……は……い?」  突然、目の前に立ちはだかった、小柄で痩せっぽちの少女に、オハムは目をぱちくりさせた。 「……」  マヒワは絶句している。 「ししょーの一番弟子は、わたし、ライラ!」  と誇らしげに胸を張る。 「はい!」  オハムが調子を合わせる。 「そのあとは、わたしのきょうだいたち!」 「は……いっ?」  オハムには展開が読めなくなってきたようで、この男にしてみれば、珍しく戸惑いの表情が現れている。 「あなたは、そのあと」 「……?」 「つまり、末っ子のおとうと弟子ね。かなり大きいけど、仕方ないわね」  オハムは、言い聞かせるようにたたみ掛けるライラの勢いに押されて、言葉なく頷くしかない。 「あなた、オハムくんね。古代イフレシア語で『至高の響き』って、いい名だわ」 「……お、お褒めに預かり、光栄です」 「いいわ、わたしのおとうと弟子にしてあげる」 「へっ? よろしいので? それは、こ、光栄至極に存じます」
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