27/32
前へ
/56ページ
次へ
 しかしながら、オハムが面白がって、ライラの口ぶりを真似て話しかけてくるのには、いちいち腹が立った。 「オハムくんには、棒を構えて立ってもらいます」 「ほう?」  オハムは新しい鍛錬に期待を膨らませた。 「それをあたしが、馬に乗って、射かけます」  鍛錬内容を聞いて、オハムの顔面が引きつった。 「オハムくんは、飛んでくる矢をすべて、はたき落とすことができたら、本日の稽古は終了です」 「本気か?」 「あたしは、かわいい弟子を殺すようなことはしませんから、ご安心を」  というマヒワの眼は笑っていない。 「さぁ、さぁ、配置について」  と有無を言わさず、弓矢を手に取って、テンに乗った。  もちろん、矢は鏃のない練習用のものだ。  当然ながら、当たれば打撲の痕は残るし、眼に当たれば失明する。  マヒワは、急所を外すが、からだには当たるように射かけていく。  いったん大きく距離をとり、駆け寄りながら、弓を引いて矢を放っていった。  最初のほうは、からだに当たる矢もあったが、オハムはコツを掴むのが上手く、すぐに余裕を持って叩き落とすようになった。  それを確認すると、マヒワは二本同時に矢を放つことをした。  オハムは、一本だと思っていたら、二本飛んできたので、逃げた。 「こらーっ! 逃げるなーっ!」  マヒワは逃げるオハムの背中に、矢を当てた。  オハムはもんどり打って、地面に転がった。 「背を向けて逃げたら、死ぬ確率が増えるでしょ!」  マヒワは馬上から、地面に伸びたオハムを怒鳴りつける。 「いや、いや、これ、剣術じゃないし!」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加