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「お前――愛されてるな。よかったじゃないか」 「師範まで、やめてください!」  ガラム師範は、今朝になって再び孤児院に来ていた。  オハムが逃亡しないように監視するためと、道みち仕合の段取りを伝えるためである。 「まぁ、あたしと鍛錬したんだから、負けっこないわ」  マヒワも、オハムの武術家としての才能を認めていた。  得意とする武器は違うが、勝負すれば互角だと思っている。  つまり、オハムで負けるようなら、マヒワが出たとしても負ける可能性が高いということだ。 「では、みなさん、行って参ります」  オハムのことだから、もっと格好付けて出発するものと思っていたが、拍子抜けするほど、普通の挨拶だった。  みんなも、「いってらっしゃーい」と並んで手を振って、普通に見送った。  やがて……馬にまたがった千刻流の師弟の姿は街道に消えていった。
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