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 孤児院で過ごしているマヒワの元に、その知らせが届いたのは、ちょうど収穫作業を終えたところだった。  子どもたちもよほど疲れたのか、建屋の中に戻っても、いつものように遊ぶこともなく寝てしまった。  マヒワも食堂でお茶を飲んで、今日いちにちの息抜きをしていた。  マヒワの隣の椅子にはスイリンが腰掛けて、同じようにお茶を飲んでいた。  知らせを届けてきたのはスイリンで、ロウライでの療養を終えたバンを、マガンの屋敷に搬送した戻りであった。 「おじさん、どうだった?」  マヒワは手元にある封書を開けるよりも、まず、バンの容態を聞いた。 「足の爪がまだ完全ではありませんが、深い傷ではありませんので、二週間ほどすれば、元気に動き回れるようになると思います」  と、スイリンはあっさりしたものだ。  その装いとは裏腹に、後日、スイリンの仲間から聞いたところでは、搬送途中ではバンのそばを片時も離れず、マガンの屋敷に着いてからも、バンの看護に付きっきりだったそうな。 「バンが復帰するまで、諜報機関は、わたくしが率いることになりました」 「ということは……」 「はい。この先の道中、マヒワさまの従者は、わたくしが務めさせていただきます」  それを聞いて、マヒワはうれしさを抑えながら、「よろしくお願いします」と頭を下げた。  主が従者に対して丁寧なものだから、従者のスイリンとしては、恐縮するほかはない。  そこでようやく、マヒワは封書をあけて、文に目を通した。  読んでいくうちに、難しい顔になっていった。
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