2/12
前へ
/56ページ
次へ
「……いかがなさいました?」  マヒワが難しい顔をするものだから、スイリンも内容が気になって仕方がないようだった。 「これは、父上がスイリンさんに渡したのですか?」 「はい。出立する直前に、マガン様が直々にお出でになりまして、これをお嬢さまにと……」 「差出人を聞きましたか?」 「いえ。わたくしは、その封書をお預かりしただけで、詳しいことは何も……」 「――宰相様です」 「はい?」 「ですから、差出人は、宰相様です」 「それは、また、雲上の御方で……」  と言いながら、スイリンはマヒワの顔があかくなっていくのがわかった。  怪訝の念をだきながら、マヒワの顔をじっと見ていると、笑うのを必死で堪えているようだ。 「お嬢様……?」 「ぷぅ――あはは! スイリンさん、その言い方、おじさんにそっくり!」  それを聞いたスイリンの顔が嫌悪感にゆがんだ。 「お嬢様、おやめください!」 「おーこわ。あーあ、おじさんが、かわいそう……」  世間で娘の父親に対する反応は、おしなべて、こんな感じだと聞いたことがあるが――まさか、こんなに身近で見られるとは。  ――あたしもお父さんが生きていれば、同じように汚いものを見るような顔をしてたのかな……。  スイリンはマヒワが急に寂しそうにしたので、驚いて、 「あれ? い、いえ、お嬢さま。これは、親子の間での、その、き、きん、近親相姦を避けるためのですね、し、自然な反応らしいのですよ……」  と、あわてたスイリンがとても適切とは言い難い説明を始めた。 「……きんしんそうかん?」
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加