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「……いかがなさいました?」
マヒワが難しい顔をするものだから、スイリンも内容が気になって仕方がないようだった。
「これは、父上がスイリンさんに渡したのですか?」
「はい。出立する直前に、マガン様が直々にお出でになりまして、これをお嬢さまにと……」
「差出人を聞きましたか?」
「いえ。わたくしは、その封書をお預かりしただけで、詳しいことは何も……」
「――宰相様です」
「はい?」
「ですから、差出人は、宰相様です」
「それは、また、雲上の御方で……」
と言いながら、スイリンはマヒワの顔があかくなっていくのがわかった。
怪訝の念をだきながら、マヒワの顔をじっと見ていると、笑うのを必死で堪えているようだ。
「お嬢様……?」
「ぷぅ――あはは! スイリンさん、その言い方、おじさんにそっくり!」
それを聞いたスイリンの顔が嫌悪感にゆがんだ。
「お嬢様、おやめください!」
「おーこわ。あーあ、おじさんが、かわいそう……」
世間で娘の父親に対する反応は、おしなべて、こんな感じだと聞いたことがあるが――まさか、こんなに身近で見られるとは。
――あたしもお父さんが生きていれば、同じように汚いものを見るような顔をしてたのかな……。
スイリンはマヒワが急に寂しそうにしたので、驚いて、
「あれ? い、いえ、お嬢さま。これは、親子の間での、その、き、きん、近親相姦を避けるためのですね、し、自然な反応らしいのですよ……」
と、あわてたスイリンがとても適切とは言い難い説明を始めた。
「……きんしんそうかん?」
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