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「あーっ! わたくしは、お嬢様の前で、とんでもなく不適切な発言をーッ!」  こんどは、理由が違うが、スイリンがあからめた顔を両手で覆って、首を振りまくった。 「ごめんなさい。からかいすぎました」  スイリンの過剰な反応に、マヒワの方が驚いた。 「あたしも父のことはだいぶ気持ちの整理ができたので、大丈夫ですよ」  マヒワがスイリンの手を取って、落ち着かせるようにいった。  半分は、自分に言い聞かせていたのかもしれない。 「それに……」  と、マヒワは続けて、 「ふふ、スイリンさんがおじさんのことを愛してるのは、わかってますよ」  と言った。深い信頼関係がなければ、探索や諜報活動など、できるものではない。 「あ、愛しているなどと、そんな――」 「あー、おじさん。かわいそー」  スイリンの反応がおもしろくて、マヒワのいじり癖が再び頭をもたげた。 「――ずいぶん楽しそうですね。わたしも混ぜていただけますか?」  マヒワの頭を押さえるように言葉をかぶせて食堂に入ってきたのは、コエンだった。 「あ、先生ぇ」  とマヒワ。  スイリンは立ち上がって、お辞儀をする。  (あるじ)であるマヒワがお世話になっているのだから、その従者たるもの、礼儀を尽くすのは当然、という思いからの挨拶だったが、マヒワのいじり攻撃から助けてもらったお礼の含みもあった。  コエンは、食卓(テーブル)を挟んで、マヒワとスイリンの向かい側に座った。 「先生も当てはまるので、どうぞ、ご一読ください」  と言って、マヒワは手に持っていた封書をコエンに渡した。
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