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「勝てる仕合だからこそ、マヒワ殿を舞台に出そうとしたのでしょう」
と、補足した。
「政治的な判断っていうのが大の苦手だから、勝ち方がわからなかったのね、あいつ……」
「ははぁ――それでお嬢様を頼りになさったのですね」
と言って、スイリンは納得するように何度も頷いた。
スイリンにとっては、マヒワが人びとから頼りにされていることの方が大事だ。
「――はっ! わたくし、いま、『外交』で気がついたのですが、お嬢様は本来であれば、『お姫様』ですよね」
とスイリンが目を丸く開いて言った。
「おひめさま? なんで?」
「父がいつも『お嬢さま』と連呼しているものだから、わたくしも自然とそれに習っておりましたが、お嬢様のご養父のマガン様は、国内に御領地を拝領された、準王族の公爵であらせられます。そのような高貴な方のご息女であれば、『お姫様』のほうが適切でしょう」
「どわぁっ! まぁ、それはそうなのでしょうけれど、父上はもう退役して、お役目のないご隠居の身ですし、それに廻国修行の道みちで、おじさんから『姫、姫』なんて連呼されたら、かなり面倒くさい奴か、危ない奴だと思われて、誰も宿に泊めてくれないですよ! 『お嬢さま』でも本当は嫌なんです!」
という、マヒワの早口な言い方がツボにはまって、スイリンは、ほほ、と笑った。
「ああ、おかしい……」
といつもは控えめなスイリンが、珍しくはしゃいでいる。
「ところで、わたくしの目の前に、剣聖さまがお二人もいらっしゃるのも珍しいですけれど、依頼の内容も珍しいですね。それに、宰相様のご依頼であれば、王命に等しいのでは?」
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