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「ううっ……。真剣にやったことないですけれど、多分そうです」 「なら、お年寄り最強説は、真実ということで」 「納得できません!」  マヒワが唸るのを見て、コエンが笑った。  二人のやりとりを不思議そうにライラが眺めている。 「ししょうと先生は、同じことをしているようなのに、少し違う」 「ライラ、答えを言っちゃだめだよ」  コエンは、ライラが直観で本質を見抜いている、と知って、口止めした。 「えっ! ライラちゃん、わかったの?」  ライラは口元を両手で覆って、ニコニコ顔だ。 「もー、くやしーい!」  もはや、どちらが子どもか、わからない状況になっていた。  師匠の威厳などはもともと無いようなものだから、マヒワは弟子を前に振る舞いを改めようともしなかった。  とはいえ、弟子であるライラに判って、自分がわからないのも癪だから、その後もマヒワはコエンにお願いして粘り強く稽古を重ねた。  このような稽古に励む一方で、状況把握と冷静な行動の鍛錬はというと、「農作業をするのが一番です」とコエンが言った。  コエンに私淑するマヒワとしては、その言葉に従うしかなかった。  ところが実際に菜園に入って、野菜や薬草の世話をしてみると、茎や葉っぱの状態だけでなく、虫が付いていないか、病気になっていないか、土の具合はよいかなど、注意して観なければならないところがたくさんあった。  もちろん、これから先の天候も予測して、いまから行動しなければならない。  確かに農作業は、冷静に物事を観察して、適切な行動をとるという意味で、鍛錬にうってつけだった。
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