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そのライラも、いちばん弟子としてきちんとしないと、と気丈に振る舞っているが、目が赤くなって、今にも涙がこぼれそうだ。
当のマヒワがいちばん泣きそうになっている。
――あー、なんて言えばいいんだろう? 何を言ってもお別れの言葉になっちゃうよー。
「コエン先生、いままでいろいろ教えて頂いて、ありがとうございました」
いつまでもお見合いをして、立っているわけにもいかず、マヒワは意を決して、コエンに礼を述べ、深々とお辞儀をした。
「マヒワ殿――もう学びは終わりですか?」
コエンは、マヒワの礼には軽く頭を下げただけで、逆に問いかけた。
「え? いえ、今後とも学びと修行は続けるつもりです、が……」
「ならば、行ってらっしゃい、ですね」
――また、先生に救われた。
「ええ、仕合に勝って、帰ってきます!」
と応えたマヒワは、いつもの調子を取り戻した。
「みんな、あたしが帰ってくるまで、しっかり鍛錬しとくんだぞっ!」
「ししょーっ!」
たまらず、ライラがカチェを抱いたまま、マヒワに抱きついてきた。
「うん、いってくるね。ライラも、しっかりね」
いつの間にやら、マヒワの周りを子どもたちが取り囲んでいた。
一人ひとりが、マヒワと手のひらを重ねて、「いってらっしゃい」と見送った。
ロウライから王都までは、馬を替えて急げば、五日ほどで到着する。
今回の旅程では、マヒワの馬はテンだけなので、倍ほどの日数がかかった。
それでも道中はスイリンと二人なので、何かにつけて楽だった。
最後の日程では、日の暮れる寸前に王都に入り、屋敷に着いた。
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