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「バンからの報告では、オハムの名を聞かなかった。ならば、ガラムの話は最近のことだな」
「はい――砦の一件のあと、おじさんの療養中に、ロウライの郊外で一緒に稽古してました」
「奴のやってみせた技は、棒術や槍術の間合いではなかった。お前たちは一体何をやっておったのだ」
マガンのぼやきを聞き流し、マヒワは孤児院で過ごした修行の日々を思い出していた。
「ほらほら、あなたも、久しぶりに娘が帰ってきたのに、ガミガミ言わないの。マヒワも縮こまっていないで、こっちに来て、一緒に食べなさい」
アッカが食事をエサに、マヒワに助け船をだした。
「はーい」
マガンが仕合の話だというので、仕合についての説明かと思ったら、ただの小言だったので、マヒワは聞き流しに徹しようかと思っていたところだった。
アッカの助け船に乗らない手はない。
「あなたも早く。冷めますよ」
マヒワは、みんなそろって食事をしていて、いつの間にか、自分には帰るところがいっぱいできていることがわかった。
――どの場所も、あたしにとっては、とても大切なところ……
思わず顔がほころんでいくマヒワは、ライラのことを思い出していた。
――いちにちの終わりに、みんな笑顔でいられますように……。
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