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 今日の仕合の結果はどうであれ、いままでの苦労もこれで終わりともなれば、仕合の始まる前から、晴れた気分になろうというものだ。  このような経過もあって、まず護衛士が競技場に現れたときには、観客の割れんばかりの歓声に混じって、重鎮たちも心からの声援を送っていた。  護衛士は観覧席の中央に一礼すると、競技場の中央に移動した。  護衛士の身長は、オハムと同じくらい長身で、筋肉質で均衡のとれたからだつきをしていた。  武器は槍を手にしていた。  剣術家を相手に、完全に勝ちを狙った武器の選択である。  武器といえば、マガンから仕合の話を聞くなかで、マヒワが何度も確かめたことがあった。それは、  たとえ剣術家であろうと、武器は何を選んでもいいのですね――。  ということだった。  それに対するマガンの返事は、「よい」とたった一言。  マヒワは、コエンの教えを忠実に実践していた。  つまり、情報収集と観察である。  観察は、実際に競技場に着くまではできないことだが、マガンに競技場の図面を描いてもらいながら、いままでの護衛士が行った仕合の様子を聞いて、ある特徴が見えてきた。  それは、相手が得意とする武器に対して、間合いの有利な武器を選ぶ傾向がある、ということだ。  結論だけ見れば、武術家同士の仕合ならば有利な武器を選ぶのは当然である。  それで、今回の仕合の相手であるマヒワが『剣聖』と呼ばれているからこそ、護衛士は、「相手の武器は剣であるに違いない」という固定観念に陥っている可能性が高い。  マヒワはそれに賭けた――。
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