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何という疾さ、そして正確さ。
マヒワの放つ矢は護衛士の急所を外しているものの、打ち払わずにはいられない。
護衛士は戦慄した。
帝国にもこれほどの技量を持った戦士はいなかったからだ。
矢をすべて打ち払ったとき、目の前にマヒワがいた。
マヒワは騎乗のまま直進してくる。
矢を撃ち尽くしたのか、その手に弓だけが握られているのを見て取ると、護衛士はマヒワに槍を突き出した。
するとマヒワは弓で槍先をわずかに逸らし、そのまま弓を捨て、槍を脇にたぐり寄せたではないか。
――しまった!
突きの勢いを流されて、護衛士の重心が前方に引き崩れる。
マヒワのつぎの行動が、護衛士にすべてを悟らせた――。
マヒワが槍を脇に抱えたのは、馬から下りるためだった。
走っている馬から飛び降りたら、さすがに転がるしかない。
馬を止めて下りるのは論外だ。
馬から地面に下り立った時点で、槍の一突きをまともにくらってしまう。
マヒワのとった行動は、いわば、護衛士に槍を使って馬から降ろしてもらうようなものだった。
それだけでは終わらない。
マヒワは馬から下りる勢いを乗せて、槍を軸にしてからだを回し、護衛士の側頭部に蹴りをいれると、護衛士と向かい合わせに着地した。
護衛士を槍ごと引き出すように後ろ向けに倒れ込みつつ、護衛士の前腰を足裏で押し上げた。
護衛士の大きいからだが、マヒワの頭上を越えて飛んでいった。
きれいな投げ技が極まった瞬間だった。
地面に仰向けに伸びた護衛士が目を開けると、槍の穂先が見えた。
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