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くたびれて両腕を食卓のうえにだらりと投げだし、俯している。
「あの護衛士は、マヒワのことを褒めちぎって帰国したそうだ」
だらしない格好のマヒワの前では、いつもと同じ位置にマガンとアッカが座っていた。
あの仕合が終わってアッカが先に帰ったあと、重鎮たちのある発言がマガンを激怒させたそうな。
そのことを小耳に挟んだアッカが、
「あなた、近頃、ずいぶん短気におなりになったんじゃない? お年を召しました?」
というアッカの声を、マヒワは目を閉じながら聞いていた。
誰もが畏怖の念を持って接するようなマガンを、アッカはぐりぐりといじっている。
マヒワは、自分のいじり癖の起源はここにあったのか、と納得した。
「あ、あれか。あのアホウどもがな、マヒワの仕合をみて、『剣聖のくせに、剣をひとつも遣わぬとは如何なものか』とほざきよったのでな。それで、『座っていただけの者が何をぬかす!』と、まぁ、こんな具合よ」
いかぬか――、とマガンに悪びれる様子は微塵もない。
「確かに、腹が立つわね」
とアッカも賛同するから、なお始末が悪い。
たしなめると思ったアッカの意外な発言に驚いたマヒワが、頭をもたげた。
アッカと目が合った。
「わたしたちは、マヒワのことを誇りに思ってますよ」
とアッカがマヒワを見つめて言うと、マガンが珍しく首を縦に振った。
マヒワにとって、これほどうれしいことは久しくなかった。
マヒワは顔がニヤけるのを抑えられなかった。
――ライラ、みんな。
ししょーは、今日いちにちの終わりに、笑顔になれたよ。
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