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 どうせ、同門のところに顔を出せば、また宴会になるに決まっている。  ここは素通りがいちばん、と決め込んだのだ。  タイゲン村では、ビンズィのところに寄った。  アオジは、あの出来事が病躯に(こた)えたらしく、十日ほど前に亡くなったという。  これからは、ビンズィが双極流剣術の家元となって、一門を率いることとなった。  村人との関係もよいらしい。  ――よくもまぁ、短期間にこれほど沢山の出来事が生じたものね。  ――あたしは、もっと安穏に暮らしたい……。  マヒワは俄然、孤児院に帰りたくなった。  テンには悪いけど、多少無理してもらおう。  テンはマヒワの意を汲んでか、駆けに駆けて、予定より半日早く、孤児院に着いた。  テンの蹄の音を聞いて、孤児院の扉が開いた。  マヒワの姿を認めると、子どもたちが駆け寄ってきた。  先頭はライラだ。  マヒワもテンから飛び降りて、みんなのところに走った。  胸に飛び込んできたライラをしっかりと抱きしめる。 「ね、ちゃんと帰ってきたでしょ」  ライラは、何度もうなずいてからようやく、 「ししょー、お帰りなさい」  と言えた。  今度は、カチェを抱いて、立ち上がった。 「あれ、どうしてだろ。(なみだ)がとまらないよう……」  えへへ――、と笑うマヒワに、子どもたちは口々に、「お帰りなさい」と言葉を掛けてくれる。  表現も、身振りも、様々だ。  ここには個性が溢れている。  マヒワはカチェを抱きながら、孤児院の戸口に向かった。  戸口には、コエンが立っていた。  その隣には――、 「おいっ! こらーッ!」
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