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マヒワが放り投げた麻袋を、荷馬車の上でアッシュとウルマが大きな布を広げて受け止めて、積んでいった。
「ししょー、これで最後ですか」
「おひとりで投げきるなんて、すごいですね」
と、子どもたちにほめられたマヒワは、ちからこぶを自慢げにみせているあたりで、「お嬢様」という言葉に、新しい定義を追加する必要がありそうだ。
「――さぁ、終わったよ。ご飯を食べたら、街へ運びましょう!」
街へ行ったら、久しぶりにバンのお見舞いに行こう、とマヒワは思っていた。
バンの怪我の具合は、ときどき訪れてくるスイリンから聞いてはいるが、バンがどの程度元気なのか、実際に会ってみないとわからない。
――また、おじさんと修行に廻れるかな?
という思いが、日に日に強くなってきていた。
――やっぱり、そろそろ帰った方がいいのかな……。
――でも、烏衣衆と魔香のことや、白沙通商連合の動静がまだまだ掴み切れていないし……。
マヒワには、廻国修行のもう一つの目的を達しないまま帰ることに、強い抵抗があった。
――まずは、おじさんに会ってからね。
――その結果、二人で続けられるか、ひとりで行くことになるか……。
いずれにしても、マヒワに、廻国修行を中止するという選択肢は無かった。
軽く食事を済ませると、セトとムーサが荷馬車を操り、その後をテンに乗ったマヒワが付いて、ロウライに向かった。
ロウライの西門を通ると、いつものように門衛が笑顔と敬礼で迎えてくれた。
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