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「はーなーしーなさーいよ!私はやってないって言ってんでしょーが!ふざけんじゃないっての!!」
「おま、力つよ……暴れんな馬鹿!大人しくしてろ、大人しく!」
「大人しくしてたら処刑されんでしょーが!嫌だっつーの!!」
「あーもう!」
男の兵士二人で両脇から抱えられつつ、カリーナは牢屋の中にブン投げられた。頭から落下して“ぶへっ!”と変な声が出る。痛い。乙女の顔に傷がついたらどうしてくれるのか!
「出せ、ここから出せー!私はやってなーい!!」
すぐに立ち上がり、柵をガンガン揺さぶりながら言う。兵士二人はそんなカリーナを“まるでゴリラだ”なんて失礼なことを言いつつ立ち去っていった。誰がゴリラだ、誰がが。カリーナは腐りたくなる。
「くっそ……あいつら好き勝手しやがって!次に会ったらぶっとばしてやるわ……!」
ぷんぷんと怒りながら、カリーナは部屋の中を見回した。
女だからといって人様と牢屋を分けてくれるような配慮はないらしい。牢の中に三人の男女が座り込んでいた。
室内にはベッドもなく、トイレがすみっこに一つあるのみ(囲いもないので、他の人達に見られながらトイレをするしかないようだ。なんて理不尽な!)。端にはゴザとボサボサの毛布がいくつも積まれている。寝る時にはこれを使うしかないらしい。
窓ははめ殺しの窓が天井近くにあるのみ。カリーナの身長では、外を覗き込むのも難しそうだった。
「威勢がいいな嬢ちゃん」
ぷんぷんしてるカリーナを見て、男の一人が告げた。屈強な体格に無精ひげの男性である。
「この牢屋に入れられたってことは、アンタも重罪で捕まったってことだろ?何やらかしたんだ?」
「公爵の娘を毒殺しようとしたメイドってことになってるらしいわよ。めんどくさ」
「ってことはやってないのか?」
「やってないやってない。あんな馬鹿娘をのためなんぞに、なんで私が人生棒に振らなきゃいけないのよ。大体、マジで殺すつもりならこんなすぐバレるようなやり方してないっての」
捕まってる以上、彼も犯罪者だろう。ひょっとしたら殺人とか婦女暴行犯なんてこともあるかもしれない。
しかし今は、愚痴を聞いてくれるなら誰でもいい気分だった。
「冤罪ってことなのか?」
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