<5・まさかあんたらが色仕掛けすんの?>

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 女装して公爵家の奥様に成りすましたエディと、その御付きの執事見習いのふりをしたマーヤ。二人で看守たちに近づいて、あの施設に関する資料を拝借するというもの。警備室のドアが開きっぱなしでも気にしていないあの様子、二人いた看守はどちらも酔いつぶれて眠りこけているということなのだろう。 「奴らを酔わせて資料を頂くのは簡単だった。あ、私はお酒はものすごく強くて、父上母上にも軍人たちにも負けたことがないのだ!」  どややん、と誇らしげな顔をするエディ。 「で、わかったことを簡潔に述べるとな。あの留置所にいる看守や警備兵たちはみんな雇われであり、ウンディーネに対する忠誠心なんてものはほぼほぼ持ち合わせていないようだぞ」 「あ、やっぱり」 「ウンディーネがムカついた奴らを次々ぶちこんでる場所ということで有名だったらしい。冤罪まみれなのは連中も知っていたし、時々人がいなくなるのもわかっていたが見て見ぬふりをしていたようだ。……奴ら、記録書類もまともに読んでなかったみたいだな。いなくなった人間の中にはろくな裁判もされず処刑された者もいる。法律どこいったってな話だが、いかんせんやってるのがお妃様お気に入りの、公爵家のお嬢様だ。自分もぶちこまれてはたまらないと、誰もが素知らぬふりをしていた様子だな」 「まあ、お金で雇われてる人間なんてそんなもんでしょうけど」  滅茶苦茶がすぎる。カリーナは頭痛を覚えるしかない。 「そもそも公では、あたし達逮捕されたことにもなってないみたいです。裁判をぶっちぎるつもりだから、逮捕したことにしてるとややこしいからそうなってるんでしょうけど」  つまり、とマーヤは続ける。 「あたし達、書類上は犯罪者でもなんでもないというか。よくよく考えたら、あたしまだ逮捕される年じゃないのに逮捕?になっててなんかおかしいなと思ってたし。……ようは実際のところ、茶番劇で逮捕を装っただけで、実質あたし達は拉致されて牢屋に閉じ込められてたみたいなものなんですよね」 「なるほど。……私はともかく、貴族のお嬢様と軍人、王子様に対してそれをやってるとなると」 「はい。明るみになると困るのは、ウンディーネさんの方ですねえ」 「ふふふふ」  にやにやと笑いながら、カリーナは三人を見回す。ガルフィが明後日の方向を見て、そういえばー、と声を上げた。 「ウンディーネお嬢様の誕生日、明日とかだったんじゃねーかなー?お屋敷でパーティやってそうだなー?」  こいつも結構悪どいな、とカリーナは思った。  つまり、敵をぶっ飛ばすにはちょうどいい機会というわけだ。
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