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心の奥底で王様を馬鹿にして、ウンディーネは鼻を鳴らした。まったく馬鹿な男だ。彼が飲むはずのワインを毒入りワインとすり替えたのはこの自分。そして、怪しいと言って匂いを嗅ぎ、毒だと言い当ててみせたのも自分。こんな簡単な演技に引っ掛かって跡取り息子を投獄させてしまうのだから、まったく馬鹿だとしか言いようがない。
まあ、流石に王子を裁判抜きで処刑するのは時間がかかる。議会の承認も必要。正式な逮捕となれば警察も動いてややこしいことになるので、書類の上では“特例法による一時監視及び拘束”という形になってはいるのだが。
自分を振った忌々しい王子を捕まえるついでに、王子のイエスマンである護衛隊長も投獄することができて一石二鳥。あとはあっちにこっちに賄賂を渡して、処刑――実質的には暗殺を急がせてしまうのみである。
――なんなら、あの留置所そのものに火を放ってもいいかもしれないわね。どうせボロボロだったし、建て替えるいい口実になるわ。
あそこには、ウンディーネに逆らったムカつく貴族や使用人しかいない。あのカリーナとかいう、ロンの家のうざったいメイドもあそこで捕まっていたはずだ。捕まる時に冤罪だなんだとギャーギャー騒いでいたものの、あいつもどうせ無産階級の女であるし数日もすれば絶望して大人しくなっているだろう。
それに巻き込まれて看守とか警備兵も死ぬかもしれないが、そんなことどうでもいいのだ。あそこにいる奴らはどうせお金で雇っただけの奴らで、自分への忠誠心なんて欠片もないことくらいわかっている。
この世の中には、己に忠実な人間と、己を溺愛してくれる人間だけ存在すればいい。
それ以外はイケメンだろうが不細工だろうが女だろうがジジババだろうが子供だろうが不要なのだ。この国の最高権力者である王様、を実質支配しているお妃様。そのお妃様の寵愛を欲しいままにしている自分は、この国の裏の支配者と言っても過言ではない。
嫌いな奴を全部排除していけば、あとは好きな奴とどうでもいい奴だけの安心安全な世界ができる。
人々はみんな気づくだろう。ウンディーネを愛し、愛されることこそ至上の幸福であるということが。
「ウンディーネ、今日はたくさんお祝いさせておくれ」
実の両親が駆け寄ってくる。王様とお妃様に挨拶をしつつ、愛娘の頭を撫でる両親。
「今日は君がこの世に生を受けた最高の日だ。たくさん贈り物も届いている。どうか楽しんでおくれ」
「ありがとうございます、お父様」
「ええ、でも油断はしないでねウンディーネ。貴女は可愛いから、たくさんの人に嫉妬されているわ。またあのメイドのように、貴女の命を狙う輩が出ないとは限らない……くれぐれも、私たちから離れないようにね」
「もちろんですわ、お母様」
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