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両親はとても愚かだが好きだ。ウンディーネの言っていることをまるごと全部信じてくれる。自分がメイドに命を狙われたというのも疑っていないし、ウンディーネが王様の暗殺未遂を未然に防いだと心から信じてくれている。ただでさえ誰より賢く、美しい愛娘が誇らしい偉業を成し遂げたのだ、今まで以上に溺愛するのもわからないことではない。
そしてその溺愛は、これからも続くと決まっている。
残念ながら王子と結婚して権力をわが物とすることはできなかったが、侯爵のロンも悪くない物件だし、何よりお妃様の寵愛があればどうとでもなるというもの。あとは適当に、跡取りになったお妃様の次男あたりと親しくしておけばどうにでもなるだろう。
「そうそう、誕生日プレゼントだけれど」
会場の隅に、山のように積み上げられたプレゼントの箱。中には人が入れるほどの大きさのものまである。
「ウンディーネ、貴女が言う通り簡単なチェックしかしてないわ。中も開けてないから、本当に何が入ってるかわからないわよ。大丈夫?」
「だから面白いんじゃないですの、お母様!誰が一番わたくしへの愛を示してくださったのか、知ることができる良い機会ですし」
「でも、万が一危険物だったら」
「ありませんわよ、そんなこと!」
そう、あるわけない。自分に危害を加えてきそうな輩は片っ端から排除したし、そもそもここには王様もいるのである。万が一爆弾でも爆発させようものならば王様お妃様にまで危害が及ぶ。そのようなプレゼント、持ってきた輩はその場で処刑されてもおかしくはない。誰もそのような危険など冒さないだろう。
そう、絶対安全だ。ウンディーネはウキウキとした気分でプレゼントの山に近づいていた。
――それにしてもでかいわね、あの緑の箱!誰からかしら……。
自分の身長よりも大きな箱に手を伸ばした、その瞬間だった。
「うらああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ばっこおおおおおおおおおん!と。爆発するような音とともに、箱が弾けた。驚いて尻餅をつくウンディーネ。すわ、テロか!と駆けつけてくる警備兵たち。
だが、もくもくと白い煙が上がっているわりに焦げ臭さはない。ただの煙幕だ。やがては晴れてきて、中に入っていた者達の姿があらわとなってくる。
「な、な、なななな、な」
ウンディーネは口をあんぐり開けた。
「な、なんで貴方がいるんですの、エディ王子!?脱獄しましたの!?」
エディ王子。それから、さっき叫び声とともに飛び出してきたメイドっぽい女と、気弱そうな下級貴族のお嬢様、屈強な兵士の四人組。残念ながら、王子以外の奴は見覚えはあるものの名前が微妙に思い出せなかったが。
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