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「脱獄なんて人聞きが悪い。わたしは何も悪いことなどしていないのに、拉致されて君の“個人的な”留置所に投げ込まれていただけだが?」
王子は、それはそれは素晴らしい笑顔で語る。メイドっぽい女がほれほれほれほれ、と抱えていた大量の紙の束をバラまいた。
「そこのウンディーネお嬢様はね、自分を振ったからってだけの理由でエディ王子の反逆をでっちあげたのよ!ついでに私もお嬢様の婚約者をたぶらかしたとか言われて投獄されたし、男爵家のお嬢様であるマーヤも機嫌を害しただけで投獄されたし、ガルフィさんに至っては王子を庇っただけなんだから!ほーれほれほれ、これがお嬢様の経営する留置所の書類のコピーよ!皆さんごらんあそばせ!」
「は、え、な、なんだこれ!?」
「え、う、ウンディーネお嬢様?冤罪をでっちあげた?え?ちょ……四十二人もの人間を拉致して閉じ込めてたって……」
「王子、反逆罪で逮捕されたんじゃなかったのか?あ、でもそういえば、逮捕されたにしては警察も動いてないし裁判の準備もなかったような……」
「既に十一人処刑されてるって、これは……!」
あわわわわわ、とウンディーネは口をあんぐり開けるしかない。
ボロいとはいえ、あの施設からどうやって脱獄したのか、彼等は。そしてどうやってこの資料を手に入れた?留置所の看守どもは何をしている?
そもそも、なんで、どういうコネでそのプレゼントの中に紛れ込んだのか。
「ここここ、こんなのデタラメよ、ありえないわ!わ、わたくしはハメられたのよ!!」
「ウンディーネ」
慌てて叫ぶウンディーネに、ずい、と王様とロンが迫ってくる。
「これはどういうことかね?……私も愚かだったとは思うがな。いくらなんでも我が息子を罠に嵌めたというのが本当なら、いくら私でも見過ごせんぞ。この件はよーく調べさせてもらう、いいかね?」
ひえ、と固まるウンディーネの視界の端。しれっとお妃様が会場の外へ逃げていくのが見えた。あーあー私は何も知りませーん!とでもいうような。
「ウンディーネ、これはよく話し合う必要がありそうだ。うちのメイドも、こんなくだらない理由でハメたのか?」
そしてロンも。
それはそれは素晴らしい笑顔で告げたのである。
「事と次第によっては、本気で婚約破棄を突き付けさせていただく。そのつもりでな」
「うっそお……」
そんなバカな、どうしてこうなった。ウンディーネは泡を吹いて倒れた。
ああ、今日は最高の誕生日パーティになるはずだったのに!
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