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もう一人、若い男性が声をかけてくる。お?とカリーナは目を見開いた。金髪に緑色の瞳、二十そこそこに見えるイケメンだ。妙に気品が漂っている――まさに掃き溜めに鶴。
「冤罪も冤罪よ。私はなんもやってないわ」
ふん、とカリーナは鼻を鳴らした。
「ま、私みたいに身分が低い女、そもそもまともに裁判なんて受けさせてもらえないってことでしょつけど?あーいやね、身分制度ってやつは」
「それは……すまない」
「なんであんたが謝るのよ」
「謝りたくもなるさ。今の法律を作ったのはわたしの父なのだから」
「……んん?」
そういえば、と私は彼の顔をまじまじと見た。テレビとか新聞で、なんとなーく見覚えがあるような。
「ひょっとして……ファ!?エディ王子ぃ!?」
思わずひっくり返った声を上げてしまった。そーなんだよ!と隣の屈強な中年男が身を乗り出してくる。
「聞いて驚け、ここにおわすのは本来王位継承権第一位のエディ王子様だ!でもって俺は王子の親衛隊長のガルフィだ。なんで二人揃ってこんな汚え牢屋に投げ込まれてるかって?王様への謀反を疑われてぶち込まれたからだがー?」
「……なんかどっかで聞いたような話ね。何故かしら」
頭痛を覚えるカリーナ。
とどのつまりエディ王子もガルフィも、国家反逆罪を疑われて投獄されたということ。
即ちこのままだと確実に処刑台送りということ。――なんでそんな呑気なんだか。
「ひょっとして、貴女たちも冤罪?」
カリーナの問に、二人はうんうんと頷いた。まるでカリーナとそっくりな状況ではないか。
ならば、残る一人の少女も。
「あ、あたし、これでも男爵家の三女なんですう……!マーヤっていうんですけどぉぉ!」
おずおずと十二歳くらいの少女が手を挙げた。まじかい、とカリーナは白目を剥きたくなってくる。ガルフィも王子の騎士をやるくらいなら平民出なんてことはないだろうし、まさかのまさか、このしょぼい牢屋にいるメンバーのうちカリーナ以外の全員が高貴な身分なのだろうか。
「貴女はなんでこんなところにいるの?」
頭痛を覚えながら尋ねると、少女はびえええ、と泣き声を上げながら言った。
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