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<2・レッツ情報収集。>
「だ、脱獄ってどうやってだ?」
カリーナの言葉に、エディは困惑したように言う。
「確かに、この牢屋には四人もの人間が何故か投げ込まれているし、全員冤罪の可能性が高そうだとは思っている。四人で力を合わせれば……できることもあるのかもしれないが」
「それもそうだけど、悠長にしてる場合じゃない可能性が高いって言ってんのよ」
全員を見回し、カリーナはため息をついた。
「あんた達もよく考えてみなさい。普通、国家反逆罪なんて重罪に問われた人間を四人も一つの牢屋に放り込むなんてすると思う?お互いに共謀して脱獄してくるかもしれないし、少なくとも取り調べの際に変な入れ知恵をしあって口裏を合わせるかもしれないのに」
「言われてみればそうですね……」
「拘束しないのも変だし、ろくに話も聞かずにいきなり牢屋に放り込んでるのもおかしいわ。ならば考えられることは一つ。最初か取り調べなんてする気がない。時期を見てさっさと全員処刑するつもりだからよ」
「そ、そんな……!」
マーヤは真っ青になって震え、ガルフィは“マジかよ”という顔で天井を見上げている。エディも薄々は想像がついていたのか、こめかみを抑えて首を振っていた。
自分達に残された時間は、恐らくそう多くはない。僅かに猶予が与えられたのは恐らく、ここに王子であるエディが混じっているからだろう。王族殺しは大罪だ。本来は同じ王族だろうとけして許されるものではない。王位継承権第一位のエディともなれば、暗殺しようとする人間も少なくなかったことだろう。彼が“王様に謀反を起こした”という証拠は必須であるはずである。
本来なら裁判もなしに処刑なんてありえない。
そのような事態になるならば、どこかしらで不正が働いている。権力のある何者かが圧力をかけている可能性が高いだろう。
いずれにせよ、無理を通そうとするならば思いがけないところで手間暇がかかってくるものだ。その時間の間に、自分達はここから脱出する手立てを考えなければいけないのである。
「それに、あんた達は悔しくないの?なーんも悪いことしてないのに、罪人扱いされて処刑されるだなんて!」
冗談じゃないわ!とカリーナは鼻を鳴らす。
「無理でもなんでも見つけてやるしかないのよ、ここから脱出する方法を!それこそ、壁に穴空けてでもね!」
「ぷっ」
はっきりそう宣言すると、エディがたまらず吹き出していた。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!なるほど、なるほど。君はただのメイドにしておくには惜しい、面白い人物のようだ」
どうやら、彼も振り切ったようだ。ガルフィ、と自らの騎士を振り返る。
「これも己が運命と諦めていたが……よくよく考えればこのような不条理を通してしまったら、これからも悲劇が繰り返されるやもしれん。これ以上罪もない人間が投獄されるようなことは避けなければならない。そのような国は傾くだけ、王子として見過ごしていいことではないな」
何より、と彼は続ける。
「己だけならまだしも……わたしを守ろうとしてくれた忠実な騎士と、罪もない少女たちを見殺しにすることなどできん。そうだろ、ガルフィ?」
「エディ王子……!ああ、ああ、本当にそうだ。さすがは王子だ!」
ガルフィが感激したようにうんうんと頷く。エディが賛成してくれたならば、ガルフィもついてきてくれるだろうとは思っていた。あとは、マーヤだけだが。
「……あたしも」
彼女は目に涙を浮かべたまま言ったのだった。
「死にたくないし……ウンディーネさんにはバケツの水でもぶっかけてやらなきゃ気がすまないですうううううう!」
「ええ、そのとおりよ。気に入ったわアナタ!」
半泣き状態でもしっかり意思表示した男爵令嬢。マーヤの背中をばしっと叩いて、カリーナは笑ってみせたのだった。
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