29人が本棚に入れています
本棚に追加
「エディ王子。鍵はどう?」
「うーん……」
見回りの兵士が通り過ぎて暫くした後、エディとガルフィが牢屋の扉のチェックに入る。鍵のあたりを引っ張ってみたり、揺さぶってみたり。
「典型的な南京錠だなぁ」
ガルフィが唸った。
「壊すのはかなり大変だぜ。俺が超絶頑張って引っ張ってみれば壊れるかもしれねえが、そうなったら100%デカい音が鳴って、見張りが飛んでくるだろーな」
「てことは超絶頑張れば壊せるかもしれない、となかなか使えるじゃないの、貴方」
「褒め言葉として受け取っておくぜ、お嬢ちゃん」
貴族相手にだいぶ不敬な物言いをしてる自覚はあるが、エディといいガルフィといい全然気にしてない様子だった。マーヤの場合は気にするだけの余裕がないということなのかもしれないが。
――同時に。わざと見張りを呼びたかったら、大騒ぎすればいいってとよね。……場合によってはそれもテね。
さっき通り過ぎていった見張りの男は、腰に鍵束をがちゃがちゃとぶらさげていた。恐らくあれらの鍵のどれかが牢屋の鍵だろう。あの男たちの一人でも捕まえて鍵を奪ってしまえば、施設内部の鍵は全部開け放題となるわけだ。それもそれで魅力的である。
なんなら、大騒ぎをして奴らに鍵を開けさせ、中に入ってきたところを袋叩きにするのもテだが。
「マーヤ、そっちは?」
カリーナの呼びかけに、それが、とマーヤが困ったように返してくる。彼女は牢屋内部を調べるように指示を出したのだが。
「この牢屋、ほんとなんもないです。寝床用のゴザと毛布以外美品もなくて、それこそトイレと小さな窓があるくらい。窓はかなり高い位置でとても手が届きませんし、鉄格子がハマってるので届いてもそこから脱出できるとはとてもとても」
「トイレの下水管からってテは?」
「そんな恐ろしいこと考えたくもないですよおおおお!汚いとか抜きにしても、トイレの穴は小さすぎて一番小柄なあたしでも抜けられませんって!それにぼっとん便所なので汚物の中に落ちることになります、むりむりのむりです!」
本気で首をブンブンと横に振って拒否するマーヤ。男爵家の令嬢ならば当然の反応だろう。というか、カリーナだってやりたいことではない。
生理的嫌悪感抜きにしても普通に命の危険があるだろう。汚物曹に落ちた上扉が開かなかったら文字通り窒息死の未来しか見えない。
最初のコメントを投稿しよう!