変な人がやってきた

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 保田が働いている施設は3階建てのビルだった。1階と2階が福祉施設で、3階が総務だった。  保田が利用者の食事介助をしていると、田中がぜぇぜぇ言いながら、近寄ってきた。  「フロアは走らないでって注意したの忘れた?あと、昨日はちゃんと風呂入った?」  保田が注意すると、田中はへへへ…と決まり悪そうに笑っていた。恐らく風呂に入らず、出勤したのだろう。  「そんなことより保田さん、昨日の白メガネ覚えてます?あいつ自宅で倒れて今日欠席みたいですよ。なんでも栄養失調とか言ってました」  栄養失調!?保田は思わず利用者のスプーンを落としてしまった。栄養失調なんてあの白メガネいつの時代の人なん?しかもなんで田中(こいつ)そんな事知ってるんだ?  田中は23歳でまだ経験が浅い職員だったが、そんなことはどうでもいいくらい不潔で、自分の服の洗濯もせず、風呂にも入らず、独特のニオイを漂わせていたが、意外にも社交的でコミュニケーション能力は高かった。まぁ、そういうと聞こえはいいが、要は誰にでも話しかける怖いもの知らずだった。  「他人の心配なんかせず、自分のことを考えな、ほんとに今日も臭いよ、あっちにいってて」  保田はシッシッと手を払って田中を追っ払い、仕事を続けていた。
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