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春の陽ざしが柔らかな明るさで部屋を満たしている。
開け放たれた掃き出し窓から、部屋の中に心地よい風が流れてくる。
レースのカーテンがふわりふわりと踊るように揺れていた。
僕はうーんと大きく伸びをして、風の匂いを嗅いだ。
微かに甘い春の香りが僕の鼻をくすぐった。
花鈴と僕の二人の休日。まったりとした時間が流れている。
花鈴がリビングのテーブルの上に、木製で作られた錆色のオルゴールをそっと置いた。
オルゴールの台座の上には二人の小人と蓄音機がのっている。
ソファーに座ると花鈴は、台座の裏にあるゼンマイを巻いた。
亜麻色のフェルトの帽子を被った二人の小人が、ゆっくりと金色のハンドルを回していく。
するとハンドルの先にある蓄音機のレコードが回り出した。
甘く切ないメロディーが流れてきた。
曲に合わせて花鈴がハミングをする。
僕はハミングに合わせて歌いだした。
──ああ、気持ちがいい。なんて心地よいのだ。
僕の声はだんだん大きくなっていった。
「うるさい！ 二三之助。人が夢の世界に浸っているところを邪魔しないで！ 折角の休日のひとときなんだから」と、花鈴は僕を睨んで言った。
「なんだよ。そんな言い方ないだろ。僕だって花鈴のハミングに合わせて歌いたいんだよ」
そう僕は反論した。
花鈴は僕の言葉を無視して立ち上がると、大切に両手で包むようにオルゴールを持って飾り棚にしまった。
1LDKのマンションは古くて少し狭いけれど、僕たち二人の暮らしは充実している。
僕が花鈴と暮らし始めてもうすぐ二年になる。
いつも、こんな感じで僕たちの日常は続いている。
僕は幸せだと思っている。
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