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美希にはミュージカル俳優になりたいという夢があった。歌を歌いながら、自分とは全く違う人物になれるところに魅力を感じたからだ。 隣の家に住む同級生の桜井(さくらい)賢立(けんた)にはミュージシャンになりたいという夢があった。自分の好きな音楽で人を楽しませたいと思ったからだ。 「この前、家族で旅行に行ったんだけどね?これお土産!偶然見つけて買っちゃった!」 「おーー!ピックじゃん!しかも青!ありがとう美希!」 賢立は玄関先でニコニコしている美希から紙袋を受け取り中を見て興奮した。 「ギター練習してるって言ってたし…賢立青好きじゃんね。頑張れミュージシャン!」 美希の言葉を受け今度は賢立がニヤリと笑ってポケットを探る。 「未来の舞台女優には、これやるよ。必要だろ?」 小学六年生の割には大きな手の上にあったのはマイクの形の容器にラムネが入った駄菓子。美希の好きなオレンジ色だ。 「はぁ?これ小さい子のお菓子じゃん…まぁオレンジだからもらっとくけど」 二人は、どちらも表現者に憧れたことでお互いを理解し合い何でも話せる仲になった。美希はいつの頃からか賢立に恋心を抱くようになったが気持ちを伝えられないまま季節は巡り、高校生になった。
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