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足の代わりになるなら靴と同じくお洒落にしたいと悩み抜いてオーダーした車椅子は世界で一台だけのものになった。ボディーは賢立の好きな青色、後輪は雅哉カラーの黄色にした。前輪は動くと七色に点灯し暗闇では注目の的で、遊園地のパレードの主役になった気分だった。 美希が車椅子になっても賢立の態度は変わらなかった。変に気を使われたらどうしようと心配していた分ホッとした。新しい曲ができたと言うので隣の家を訪ねると珍しく元気がない。二人はコンビニでジュースを買い外で飲んだ。 「元気ないね。何かあった?」 「…馬鹿馬鹿しいって言われた。夢は眠ってる時に見るもので叶えるものじゃないって。俺だって簡単じゃないって分かってる。でも…」 賢立は小さく声を吐き出し言葉を詰まらせた。 「おじさんとおばさんは賢立の曲を聴いたことないからそんなこと言うんだよ!やっぱりサイトに上げよう!口出しできないくらい有名になればいいんだよ!」 「メロディーだけじゃ…せめて何か歌詞がないと。でも俺、空想は苦手だし…」 自分の思いもあって強い口調で提案した美希は、さらに声を小さくし落ち込んでいる賢立を元気づけたい一心でスマートフォンのメモ画面を開き今度は、そっと打ち明けた。 「あの。こんなのどうかな…?」 賢立は画面に目を走らせ驚いた。まるで一つの物語のようだ。 「これ、全部美希が…?」 「……うん。勝手にごめんね。おかしい?」 「すっげえ!プロみてえ!」 そう漏らす瞳はキラキラと輝いている。それは美希が賢立への想いを色々な角度から表現したものだった。 美希がつけた詞で歌い、賢立はついに動画サイトに曲をアップした。美希は宣言通り毎日、動画を再生した。好きな人が自分の考えた詞を歌っているのは少しくすぐったかったが、幸せだった。再生回数は徐々に伸びていった。 「CLOVERと同じ事務所からデビューしないかって連絡が来た!ありがとう!美希のお陰だ!」 ある日、そう報告を受けて初めて賢立にしっかりと抱きしめられた美希は瞳に涙を浮かべながら相手の背中に腕を回した。 「良かったね!夢、叶えられるね!本当に…良かった…嬉しい…」 「美希がいてくれて良かった…また作詞、お願いすることになるかも」 「いいよ任せて。賢立のことは昔からずっと見てるから」 二人はしばらくそのまま、お互いの体温を感じていた。
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