愛おしい我が子

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 眠い頭で私は考えた。どうせ寝ないなら、寝てくれるかどうかも分からない子守唄じゃなくて、好きな歌でいいんじゃないかって。そんな考えに行きついたのは、きっとあまりにも眠すぎて、ハイになってたからかもしれない。    私は七年間、某アイドルグループを推している。コンサートに行きたくて毎回申し込んでいたけど、いつも落選している。涙を飲んで円盤化を待ち、もちろん初回限定盤をゲットしてきた。さすがに千花が生まれてからは、コンサート参戦は諦めているけど、毎日コンサート映像を流しながら家事をして、気分を上げているのだ。    まずはノリの良いこの歌だ! 私は大きく息を吸って、千花の背中をリズムに合わせてトントン叩き、身体もそれに合わせて揺れて歌いはじめた。歌詞もメロディも最高にいい。好きな歌を歌っているとテンションも高くなる。もはや本来の目的も忘れてしまいそうなくらい、憂鬱な気分が晴れていった。これなら辛い寝かしつけも、少しは楽しくできるだろう。  テンポの良い歌だったので、ノリノリで歌っていたんだけど、気がつくと泣き声が止んでいる。千花の顔を見ると、目がとろとろして今にも寝てしまいそうだった。 「え!」
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