死者の鼻歌

2/5
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 そんなやりとりをしながら密会を繰り返していたある日、マリから、俺の子を妊娠したと告げられ、責任を取れと迫られた。  俺は頭を抱えた。マリとは遊びだったからだ。  後日話し合おうと何とかマリを宥めて、自宅に戻ると、部屋に電気が付いていなかった。   ユウナはまだ帰ってきていないのだろうか。  不思議に思いながら家の中に入り、リビングのテーブルに置かれた物に目を瞠った。  一つは離婚届と結婚指輪。  ユウナの書く部分は全て埋めてあった。  もう一つはメッセージアプリをプリントアウトしたもの。 『奥さんは癒やしてくれないの? 身体で(笑)』 『あんな年取った身体に反応しないよ(笑)』 『奥さん、かわいそー(笑) 代わりに私がいっぱい癒やしてあげるね♡』  俺とマリのやりとりのスクショが、A4の紙何枚にもわたって印刷されていた。  どうやらユウナは、俺が浮気をしていることに気付いていたらしい。  全身から血の気が引いた。  ユウナと離婚する恐怖ではなく、俺の有責で離婚することで発生する慰謝料の相場が脳裏を過ったからだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!