死者の鼻歌

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「♪~~」  皿洗いしている妻――ユウナが、鼻歌を歌っている。  彼女の機嫌が良いときの癖だ。  この鼻歌は彼女の自作。  機嫌が良いときにいつも歌うため、俺もすっかり覚えてしまった。  ご機嫌な彼女を後ろから抱きしめると、ユウナは驚いて、洗っていた皿をシンクに落としてしまった。陶器がぶつかり合う音がしたが、俺たちにはそれに構う余裕はなかった。  互いの舌を絡ませながら寝室に移動し、求め合う。  まだ結婚して半年だ。仕方ない。  これからも、こんな日々が続くのだと信じて疑わなかった。  だが結婚して五年。  妻は変わった。  一言でいうなら、女を捨てた。  仕事も家事も完璧にこなしているが、身だしなみも体型も崩れ、つまらない女になってしまった。そんな女を抱く気もなく、今ではずっとレスだ。なのに彼女は求めてくるのだから鬱陶しい。  癒しを外に求めた。  マッチングアプリで出会った女子大学生――マリと遊ぶようになり、一線を越えた。久しぶりの若い身体だった。罪悪感よりも満足感の方が勝った。
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