1.

2/3
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 昼休みになった。  三人の職員はカトリさんを探したが、役場の中にはいなかった。  何でも町おこし協力隊の仕事で、この町の山の中にある棚田の写真を撮りに行ってしまったらしい。 「一人で行ったらしいよ」 「よし、後を追おう」 「えっ?」 「あそこの棚田はクマやイノシシが出るかもしれないから、一人で行っちゃダメなところなの。移住してきたばかりで知らないんだよ」 「でも、そうすると、昼休み中に戻ってくるのは無理だよ」  棚田は意外と遠いのだ。  しかし、課長がこれに許可を出した。  課長はカトリさんが一人で棚田に出かけて行く時、何も考えずに呑気に送り出していたのだが、三人の会話を聞いて、ことの重大さに気付いたのだ。  かくして三人の職員は、カトリさんを追って山の中に車を走らせた。  しかし、棚田に着いても、周辺にカトリさんの姿はない。 「どこいったんだろう」 「車はあるのに…」  その時、一人がちょっと離れた棚田の中に、カトリさんがいるのを見つけた。 「あそこだ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!