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王子、魔将軍に遭遇する
「息子よ」
「はい」
「世界は今、魔王とその配下の魔物達によって危機に瀕しておる。そこで、お前を見込んで頼みたいことがある」
「何でしょうか?」
「お前は、わしの厳しい教育や訓練を受け、立派な男に成長した」
「…………」
「それだけではなく、お前には伝説の勇者の血も流れておる」
目の前にいる父上にも同じ血が流れているのだが、俺はあえて口にしない。
「そんなお前に魔王を倒してもらいたいのじゃが、どうじゃ? できるか?」
「…………」
「なんか、不安そうな顔しておるな。何もお前一人で倒せと言っておるのではない。この世界にはまだ見ぬ頼もしい仲間達がおるはずじゃ。そやつらと力を合わせるのじゃ」
「……はい、わかりました。ところで、父上」
「なんじゃ?」
「父上は一緒に行かれないのですか?」
「馬鹿もん! わしは国王じゃ。行きたいのは山々じゃが、国を治め、民を守るという役目がある。だから行けないのじゃ」
「はい」
「というわけで、頼んだぞ」
こうして、俺は魔王討伐のために旅立つことになった。
だが、今話していた人物を父上と呼ぶことには抵抗がある。一応、実の父親であることには違いないのだけれど。
確かに俺は生まれた時から父上と母上に育てられ、ここで暮らしてきた、ということになっている。
だが、俺は元々、日本人。最初からここにいたわけではない。
ある日、気が付いたら、ここにいたのだ。
すなわち、この世界に転生してきたのだ。
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